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破産(はさん)とは、広義には債務者が経済的に破綻して、総債権者に対して債務を完済することができない状態にあること、又は裁判所(破産裁判所)がそのような状態にある債務者の財産を包括的に管理・換価して総債権者に公平な弁済を得させるためになす手続(破産手続)をいう。破産法は平成16年に大幅な改正が行なわれた(平成16年法律代75号)。
- 破産手続の倒産処理法制における位置付けは、倒産処理手続を参照。
- 破産事件の動向は、裁判所のWeb Siteの「司法統計」コーナーに掲載されている「司法統計年報」の「民事・行政事件編」を参照。
申立て
破産原因(破産手続開始決定の実質的要件)
破産手続開始決定は、債務者が一定の経済的破綻に陥ったときになされる。これを破産原因といい、その主なものが支払不能である(破産法第15条、16条、222条)。詳細は、破産原因を参照。
申立て
破産手続開始決定は、原則として、破産手続開始の申立があってはじめてなされる(破産法第30条1項)。
- 以下の説明のほか、詳細は申立て (破産)を参照。
債務者が個人である場合、破産の申立ては、債務者の営業所、住所、居所又は財産を有する時に限り、法人その他の社団又は財団である場合には日本国内に営業所、事務所又は財産を有する時に限り、することができる(同法4条1項)。
破産事件は、債務者が営業者であるときはその主たる営業所の所在地、外国に主たる営業所を有するときは日本における主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する(破産法第5条1項)。
多くの裁判所が、自己破産・同時廃止・免責の申立ての定型申立書を作成し、申立てを希望する者に配布している。
自己破産を申し立てる際には、申立てと同時に、財産の概況を示すべき書面並びに債権者及び債務者の一覧表を提出することを要する(同法20条)。前記の定型申立書においては、申立書のほかに陳述書も作成することになっているが、この陳述書が上記の「財産の概況を示すべき書面並びに債権者及び債務者の一覧表」である。この陳述書は、免責不許可事由の存否に関する証拠としても用いられる。
多くの裁判所においては、自己破産・同時廃止・免責を申し立てる際に、破産手続の費用を予納するよう要求される。この予納金は主として官報公告の費用に充てられ、具体的な金額は裁判所によって異なるが、基本的には、15,000円ないし20,000円程度であることが多い(14,170円がほとんど)。また、これとは別に、破産及び免責の各申立ての手数料として合計1,500円(破産につき1,000円、免責につき500円)の収入印紙を申立書に貼り、郵便物の料金に充てるための費用として、裁判所が定める金額の郵便切手を予納しなければならない(民事訴訟費用等に関する法律)。
破産手続開始決定
- 以下の説明のほか、詳細は破産手続開始決定を参照。
破産原因の審理
破産手続開始の申立てがあると、裁判所は、申立書その他の提出書類の記載から破産原因の存在を認定することができるか、これらの書類の記載に十分な裏付資料が存在するかという観点から審理をし、訂正補充を債務者に指示する。
書類や資料が調うと、債務者審尋あるいは債務者審問と称して、債務者を個別に裁判所に呼び出し、裁判官が、申立書その他の提出書類の記載内容に誤りがないかを確認し、破産原因及び同時廃止の要件の存否を認定するために必要な事項を聴取する。なお、こうした期日を開かないで審理を進める事案もある。また、免責の申立てもなされている事案であって、免責不許可事由の存在が疑われるものについては、その際に、裁判官が必要と認める訓戒を加えたり反省文の提出を指示したりすることもある。
審理の結果、破産原因の存在が証明されれば、裁判所は破産手続開始決定をなす。
免責及び復権
申立て及び審尋
破産者は、破産手続の解止(「解止」とは、手続が終了することをいう。)に至るまでの間、いつでも破産裁判所に免責の申立てをなすことができる(同法366条の2第1項前段)。破産の申立てと同時に免責の申立てをしなかった場合には、同時廃止の決定が確定した後1か月内に免責の申立てをなす必要がある(同項後段)。免責の申立ての手数料は、500円である(民事訴訟費用等に関する法律3条1項、別表第一16項上欄ホ、同項下欄)。
免責の申立てがあったときは、裁判所は、期日を定めて破産者を審尋することを要する(破産法366条の4第1項)。もっとも、実務上は、申立書その他の一件記録に特段の免責不許可事由が見当たらないような事案については、集団免責審尋と称して、多数の破産者らを一室に集め、裁判官が、破産者らに対し、申立書その他の提出書類に虚偽の記載をしなかったかどうかを確認した上で、訓戒をし、異議申立期間の言渡し(同法366条の7第2項)をなすにとどめる庁がほとんどである。
免責不許可事由
裁判所は、以下の場合に限り免責不許可の決定をなすことができる(同法366条の9各号)。
- 破産者に詐欺破産(同法374条)、懈怠破産(同法375条)、監守違反(同法377条)又は説明義務違反(同法382条)の罪にあたるべき行為があると認めるとき(後記「罰則」を参照)。
- 破産者が、破産宣告前1年内に、破産原因があるにもかかわらず、それがないことを信じさせるため詐術を用いて、信用取引により財産を取得したことがあるとき。
- 破産者が、虚偽の債権者名簿を提出し又は裁判所に対しその財産状態につき虚偽の陳述をなしたとき。
- 破産者が、免責の申立て前10年内に免責を得たことがあるとき。
- 破産者が、破産法に定める破産者の義務に違反したとき。
もっとも、裁判所は、これらの免責不許可事由がある場合でも、免責の決定をなすことができると解されており、これを裁量免責という。例えば、裁判所は、破産者に浪費(同法375条1号。懈怠破産行為にあたる。)や詐術(同法366条の9第2号)がある場合でも、比較的軽微なものにとどまるときは、前記の訓戒を受けたことや反省文を提出したことなどを考慮して、免責の決定がなされることもある。なお、一時期、破産者に一定額を積み立てさせて、債権者に分配させたうえで免責の決定をする運用がされていたことがあるが(免責のための任意配当)、個人再生手続が導入されたこともあり、現在では行われていない庁がほとんどである。
詐欺破産につき破産者に対する有罪の判決が確定したときは、裁判所は、破産債権者の申立てにより又は職権をもって、免責取消の決定をなすことができる(同法366条の15前段)。免責が破産者の不正の方法により得られた場合において、破産債権者が免責後1年内に免責の取消の申立てをなしたときも、同じである(同条後段)。
免責の効力と非免責債権
裁判所が免責の決定をし、これが確定すると(同法366条の11)、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れる(同法366条の12柱書本文)。ただし、以下に掲げる請求権については、その責任を免れることができない(同但書)。
- 租税
- 破産者が悪意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償
- 雇人の給料、ただし、一般の先取特権を有する部分に限る
- 雇人の預り金及び身元保証金
- 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権、ただし、債権者が破産の宣告があったことを知っている場合を除く
- 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金及び過料